■夢で会えたら


 
 全ての戦いを終え、復興に励む者達の心に一時の安らぎを・・・と、ソルファレナで『七夕』の祭りが催された。
 遠い昔、恋人を想いながらも神の手により引き離されてしまった天女の物語。
 それを、人々は『まるで姫様と王子殿下のお話のようですね』と囁いた。



 七夕には、笹に願いを書いた短冊を飾る。
 そうすれば、願いが叶うのだとか。
 長い戦いの日々から解放されて間もない時であるから、平和に込める祈りをしたためる短冊がほとんどだ。
 が、中には個人的な『お願い』を書いたものもある。


 『ネコが飼いたい』
 『竜馬騎兵になりたい』
 『お姫様にイイお婿さんが見つかりますように』


 太陽宮前に用意された巨大な笹に吊るされた短冊一つ一つに目を通し、王子は柔らかく微笑んでいた。
 と、一際高い場所に吊るされた短冊に目を止める。
 かなり高い。王子がいくら背伸びしても届かないような場所だ。
 「あれー?どうしました?王子」
 そこへカイルが通りかかる。
 「あの短冊、カイルは取れる?」
 「あれ、ですか?」
 王子が指差す短冊にカイルが手を伸ばすが、飛び上がっても指に触れる程度で、僅かに届かない。
 「うーん、誰の短冊でしょうねー?こんな高いところに・・・ゼガイ殿かなー?」
 「ゼガイはこういうの、あまり興味ないみたいだけど・・・」
 王子とカイルは並んで短冊を見上げ、首を捻る。
 「恥ずかしがり屋さんなのかもしれませんねー。誰にも見られないように、一番高いところに吊るしたのかもしれませんよ」
 ならば、わざわざそれを取って何が書かれているのか見てしまうのは、失礼かもしれない。
 「そっかー・・・僕が叶えられる願いなら、叶えてあげたかったんだけどな」
 「ああ。それで王子、さっきシンロウさんに何かお願いしていたんですねー?」
 シンロウはかつて、世界をまたに駆けて活躍した伝説の大交易商人・サイロウの孫だ。
 交易・交渉を得意とするシンロウは、お願いすれば大抵のものを見つけてきてくれる。
 「うーん。じゃあ、こっそり見せてもらっちゃいましょうか」
 「え?・・・うわっ」
 茶目っ気たっぷりに片目を瞑り、カイルは王子を肩車する。
 「どうですか王子ー?届きました?」
 「うん、ありがとうカイル」
 にっこりと笑い、王子は届かなかった短冊を取る。
 そして下ろしてもらい、改めて短冊を見て表情を曇らせた。
 「なんて書いてありますー?」
 様子の変わった王子の手元を覗き込み、カイルも眉を寄せる。
 「・・・・あー・・・・王子・・・・」
 「・・・・・」
 王子は何も答えない。
 短冊を手に持ったまま、悲しげにそれを見つめる王子の姿に、カイルは心の中で『あちゃー』と舌打ちした。
 「あ、王子。こちらにいらっしゃったん・・・・・・どうしました?」
 様子のおかしい二人の元に、リオンが駆け寄る。
 「それ、姫様の短冊ですよね?」
 王子の手に握られた短冊を指し、リオンは言った。
 「リムの・・・?」
 「はい。先ほどミューラーさんに頼んでおられました。一番高いところに飾りたいから、と。その赤い短冊は間違いないと思います」
 筆跡でもしやと思っていた王子は、リオンの言葉を受けて頷く。
 「ああ、ミューラー殿でしたかー。どおりで届かないと・・・って、感心してる場合じゃないですね。俺、ミアキス殿を呼んできます。王子の部屋で作戦会議しましょう」
 王子は頷き、カイルは太陽宮の中に急ぎ戻っていった。
 
 
 


 「ミアキス殿は多用があるということですが、後で来てくれるそうです」
 自室に戻った王子は世話付きの女官を下がらせ、戻ってきたカイルを椅子に座らせた。
 「どうしたんですか?王子。それにカイル様、作戦会議って・・・?」
 寂しげに俯いている王子を気遣わしげに覗き込み、リオンが尋ねる。
 そのリオンに、王子は先ほどの短冊を差し出した。
 「あ・・・・・・」
 「・・・・・どうしたらいいかな」
 王子はそう呟いた。
 答えを尋ねるのはリオンを困らせるだけだとわかっているから、あえて独り言のように言う。
 短冊には、『父上と母上にお会いしたい』と書かれていた。
 「スイマセン王子・・・おれが余計なことしたから・・・」
 「カイルのせいじゃないよ。お願いしたのは僕だ」
 手を合わせて詫びるカイルに、王子は首を振る。
 「でも王子、このお願いばかりは、現実的に叶えるのは無理です。やっぱり見なかったことにして、元に・・・・・」
 言いかけ、カイルは言葉を切る。
 この王子がそれができる人間なら、そもそもここまで短冊を持ってきてはいない。
 しかもこれは、王子が最も愛する妹の願いだ。
 「ハスワール様・・・ではダメですよね。陛下に似ていらっしゃいますが・・・・」
 「いやー、ハスワール様ではさすがにボリュームが」
 「カイル様!」
 キッとリオンに睨まれたカイルが口を閉じる。
 似ているというならサイアリーズの方が、とも思ったが、流石にそれを口に出すほど無神経にはできていない。
 「フェリド様役はどうします?雰囲気的には、俺はゲオルグ殿が一番近いとは思いますが」
 「ゲオルグ様が・・・・ですか?」
 リオンが一瞬、複雑そうな顔をする。
 恩義のある男以上の感情で慕っている人物であるだけに、いろいろ思うところがあるようだ。
 「失礼ですが、ゲオルグ様にはフェリド様のような威厳がありません。第一、フェリド様は昼食の代わりにチーズケーキを召し上がるような甘党ではありませんし、食後に必ずデザートを要求されたり、お店のケーキを買い占められたりは」
 「リオン、気持ちはわからなくはないけど・・・・」
 王子が苦笑する。
 結局、三人はそれぞれ考え込み、数分後には同時に重い溜息を吐き出すしかなかった。


 そこへ。


 「おまたせしました〜」
 天真爛漫な明るい声とともに、ミアキスが入ってきた。
 「あらあら〜?暗いですねぇ?どうしましたぁ?」
 「あー待ってましたよミアキス殿」
 カイルはテーブルの前に置かれ、3人に睨まれていた短冊をミアキスに渡す。
 「これは、姫様の・・・・・・・・・あらぁ」
 書かれている文字に目を通し、ミアキスも声を落とす。
 「やっぱり、気にしてらっしゃったんですねぇ」
 「・・・・やっぱり?」
 椅子に座ったミアキスは、王子に短冊を返して頷く。
 「姫様、囚われていた頃、最初は『夢に母上、父上が出たら泣いてしまうから眠らない!』なんておっしゃっていたんですけど、お小さい身で無理も続かず、翌日には眠られてしまったんです。でもその夜は夢に陛下も閣下も出てこられなかったそうで、姫様は『母上、父上はわらわに泣いてはならぬと仰せなのじゃ。だからわらわが泣かぬよう、夢に出られなかったのじゃ』・・・・と、おっしゃっていたんですけど」
 「・・・・その後も、ずっと夢にお出にならない、ということですか?」
 リオンの言葉に、ミアキスは頷く。
 「こうして、王子に救われましたし、もうお出になられてもよろしいのに、夢に出てきて下さらないのは、自分に落ち度があったからではないのかと、悔いておられるようです」
 「落ち度?落ち度なんて・・・リムには・・・」
 何もわからず、囚われて傀儡として扱われたリムスレーアには、どんな小さな非もありはしない。
 妹を溺愛する王子が柳眉を険しくするのを、「まぁまぁ」とカイルが宥める。
 「王子、一度姫様をお助けしようとして失敗しましたよねぇ?姫様も自ら陣頭に立たれて。その時、王子の元に行くためとはいえ、多くの兵を犠牲にしてしまいました。多分、それを気になさっておいでなのだと思いますぅ」
 「ああ、あの時の・・・・」
 言いかけてカイルは口を噤む。
 王子とリオンは俯き、それぞれあらぬ方向を見つめている。
 辛いことを思い出させてしまった・・・と、ミアキスはすまなそうに二人を見つめる。
 「もうすぐ、正式な女王即位式もあります。でも、陛下が夢に出てこないことを、陛下のお怒りをかっているせいだと思っている姫様は、その即位式もプレッシャーなんじゃないですかねぇ?精神的な重石を取り除かないことには、姫様の夢に陛下と閣下は現れないと思いますぅ」
 王子は「うーん」と唸る。
 「じゃあ、本当に母上と父上に会いたいんじゃなくて、夢で会えればいいんだね?」
 良く考えれば、そうだよなぁ?と王子は納得する。
 いくらリムスレーアが子供でも、死んでしまった人間に会えないことくらい理解している。
 聡明なリムスレーアが、それを短冊に願うことはないだろう。
 「でもそれって、陛下やフェリド様に似ている人間を探すより難しくないですかー?」
 「そう・・・ですよね。できれば叶えて差し上げたいと思いますが・・・」
 「あ、それいい考えですねぇ」
 お手上げ状態のカイルに、ミアキスはビシっと指を突きつける。
 「え?」
 「さっきも言ったように、問題は姫様の心の中なんですよぉ。要するに、姫様の心を解して差し上げればいいんですぅ」
 「・・・そういうものですか?」
 「そういうものなのよぉ」
 首を傾けるリオンに、ミアキスはにっこり笑って請け負った。
 「この七夕のお祭りは、即位とか王族とか、関係ないお祭りなんですぅ。神話の中の天女が見せる、束の間の夢の世界なんですよぉ〜。いっぱいごちそう用意して、楽しませて差し上げましょう〜」
 「・・・・自分が楽しみたいだけなんじゃ・・・」
 王子の呟きには、聞こえないフリをする。
 「じゃあ、当初の作戦通り、陛下とフェリド様のそっくりさんを探すってことで決まりですね。誰にします?」
 「えー?そんなの決まってますよぉ」
 カイルの言葉に、にーっこりと笑ってミアキスは意味ありげに王子を見る。
 「このファレナに、王子より陛下にそっくりな方はいませんものぉ」
 「・・・え?」
 呆けている王子を他所に、カイルは納得して大きく頷く。
 「ああ、そうですよねー!その通りですよ、ミアキス殿」
 「では、陛下役は王子で決まりですね。・・・フェリド様役はどうしましょう?」
 「あの・・・・リオン?」
 当人は置き去りにして、話はどんどん進められる。
 「それも心配ご無用ですぅ。私がとっておきの方を連れてきちゃいますからねぇ?姫様のために、がんばっちゃいますよぉ〜?」
 
 
 
 
 
 七夕の夜、太陽宮前の作りつけられた笹を囲むように、広場に出店が並び大勢の人々が集まっていた。
 「今宵は無礼講じゃ!夜は現の姿を隠す。昼の現の姿を忘れ、夢の夜を存分に楽しまれよ!」
 リムスレーアの言葉に、周囲からわぁっと歓声が上がった。
 ジョッキを傾け、豪快に飲み食いする者もあれば、妖艶な美女にカード勝負を挑まれて、鼻の下を伸ばしている男もいる。
 それらを満足げに眺め、リムスレーアは巨大な笹を見上げた。
 人々の願いを込めた短冊に彩られた笹は、風に揺れてざわざわと音を立てる。
 「む・・・・?」
 「どうしましたぁ?姫様」
 眉を顰めたリムスレーアの傍に、ミアキスが屈みこむ。
 「わらわの短冊が・・・見当たらぬ」
 「ええ〜?」
 とぼけるミアキスに、リムスレーアは表情を険しくする。
 「一番高いところに吊るしたのじゃ。誰も手が届かぬところに・・・」
 「今は夜ですから、見えにくくなっているんですよぉ。ちゃんとありますよぉ?」
 「そう・・・かのぉ?」
 むぅと唸り、リムスレーアは首を傾げる。
 「ところでミアキス。兄上はどうしたのじゃ?昼から姿が見えぬのじゃが・・・」
 「ああ、王子は支度をなさってますぅ。もうすぐいらっしゃると・・・・」
 「支度?」
 「あ、いらっしゃいましたぁ〜!」
 




 連なる提灯のほのかな光に照らされて、天女の衣装を纏う女が男に手を引かれて現れた。
 一瞬しんと静まり返り、そこに集まった人々がその美女と美男を凝視する。
 まさに、神話の恋人たちが現れたかのようだ。
 その粋な趣向に、人々は歓声を上げ、拍手を送った。
 リムスレーアは目を大きく見開き、静々と自分に向かって来る女性を見つめていた。
 やがて目の前に膝をつき、目線を合わせると女性は照れたような曖昧な微笑みを浮かべる。
 「あ、兄上・・・・・!?」
 ぽかん、と口を開けていたリムスレーアは、やっとの思いでそう言った。
 あまりの見事な美女っぷりに、他の言葉が出ない。
 「きゃあ〜!すっごく綺麗ですよ王子ぃ。そうしてると、本当に陛下みたいですぅ!流石ラハルちゃん!」
 飛び跳ねながら、ミアキスは後ろに控える作戦の立役者の一人を褒め称える。
 「素材がいいからな」
 そう言いつつも、王子の化粧の出来映えに、ミアキスの幼馴染兼竜馬騎兵はまんざらでもなさそうだ。
 『自分の美貌も武器のうち』を豪語するこの男の手腕もあってか、王子は見事に飾り立てられている。
 きゃわきゃわとはしゃぐミアキスに、妹のためとはいえ女装させられることになった王子は、恨みがましい視線を向けた。
 「お・・・驚いたのじゃ・・・・。まるで・・・母上が現れたのかと思うた・・・・」
 衝撃から解放されたリムスレーアは、しみじみと兄を見つめてそう言った。
 「こちらの殿方・・・いや、もしや群島諸国連合艦隊、スカルド・イーガン提督のご息女・ベルナデット殿か?」
 「申し訳ありません姫様。私がこのような姿で・・・」
 ベルナデットは頭を下げる。
 その姿は神話の男をモチーフにはしているが、髪形や着物はフェリドの着ていたものに似ていた。
 「前に会うた時はわからなんだが・・・そうして見ると、その髪色、そのクセ毛・・・まるで父上のようじゃな」
 流石に男と似ていると言われるのは、胸中複雑だろうが。
 「ベルちゃんもカッコイイですよぉ〜?ずっとみんな、ベルちゃんが誰かに似ているって言っていたんですよねぇ。この前、フェリド閣下の姿絵を見て、これだぁ〜って思ったんですぅ〜!」
 「他人の空似ってあるんですね・・・」
 王子が化粧されている間、始終渋面だったリオンだが、ベルナデットの変貌振りには素直に感嘆していた。
 事フェリドに関する限り、かなり採点は辛目なリオンだが、これは合格点らしい。
 「兄上・・・コレは詰め物か?」
 リムスレーアは王子の胸のあたりの膨らみに手を置く。
 ラハルも念を入れたもので、その大きさも柔らかさも女王のモノに酷似していた。
 もっとも、なぜラハルが女性の胸の形状や柔らかさまで考慮に入れられたのかは、定かではない。
 王子は穏やかな微笑を浮かべたまま頷く。
 「・・・・わらわの短冊を見たのじゃな・・・」
 「・・・・うん。ゴメン」
 声を出すと夢が壊れるかと、口を噤んできた王子だが、思わず口を開き詫びる。
 「いや、よいのじゃ・・・・わらわは母上に会えた・・・・」
 リムスレーアはぎゅっと王子の首にしがみ付いた。
 胸の詰め物のせいでくすぐったく、王子は曖昧に笑う。
 「兄上がそばにいてくれるなら、何も恐いものはないのじゃ・・・。女王になることも、もう恐くない」
 「・・・・」
 その覚悟も心構えも出来ぬうちに、女王に仕立て上げられたこと。
 そして、その即位は一時無効とし、再度女王になるという責務と向き合う時間を与えられたが、その重さは10歳の少女の身には辛かったに違いない。
 「・・・兄上、あと一つだけ、わらわの願いを叶えてくれぬか?」
 「・・・何?」
 尋ねた王子の首筋に、ぽつっと温かい雫が落ちる。
 はっとしてリムスレーアの方を見ようとするが、しっかりと首に腕を回し、王子の首筋に顔を埋めるその表情は見ることが出来ない。
 「・・・・今宵が最後じゃ。兄上と一緒に寝たいのじゃ」
 「・・・いいよ」
 王子はリムスレーアを抱き締めたまま、静かに空を見上げた。





 女王に即位してしまえば、もう今のように、リムスレーアが王子に甘えてくることはないかもしれない。
 女王になることへの不安や悩みを訴えてくるかもしれないと思いながら、自室のベッドに妹を招いた王子だったが、リムスレーアが話すのは子供の頃の思い出話ばかりだった。



 王子はベッドの中で、ゆっくりと目を開く。
 抱きかかえるように眠っていたはずなのに、すでにベッドの中に妹の姿はなかった。
 わずかにぬくもりだけがシーツの上に残っている。
 『今宵が最後』
 そう、リムスレーアは言った。
 昨夜も時を惜しみ、いつまでも話を続けようとするリムスレーアを宥めて眠りにつかせたのに。
 てっきり・・・目が覚めても、リオンが起こしに来るまでは離れようとしないと思っていた。
 少し物足りなさを感じながらも、そう考えるのは妹を『子供』と思っていることの証だと恥じた。
 いや、『まだ子供だ』と思いたかったのかもしれない。
 だから、リムスレーアが「一緒に寝たい」と言った時、嬉しかった。
 いつまでも『可愛い妹』でいて欲しいと思っていた。
 でも、リムスレーアはもうすぐ女王になる。
 名残を惜しむこともなく、王子の目覚めを待たなかったのも、『甘えん坊の妹』と決別するためだったのかもしれない。
 「失礼します。王子、起きてらっしゃいますか?」
 ノックの後、リオンが入ってくる。
 「おはようございます王子」
 「おはよう、リオン。昨日はご苦労様」
 「いえ、私は・・・王子の方が、お疲れではありませんか?」
 言われ、王子は苦笑する。
 「まぁ・・・・女性はタイヘンなんだってことが、よくわかったよ」
 肌にはいろいろ塗り込まれて息苦しいし、帯はきつく締め上げられるし。
 それを毎日繰り返していた母に、今更ながらに感服している。
 「姫様、お元気になられたようですし、陛下とフェリド様の夢も見ることが出来たんじゃないでしょうか」
 「うん・・・そうだといいな」
 成り行きで女装させられ、しかもその姿を大勢の人間の前に晒すことになったが、それでリムスレーアの心の痞えが取れるなら・・・・。
 「・・・王子・・・・」
 「ん?」
 リオンが扉の方に視線を促す。
 何やら、騒々しい足音が近づいてきている?
 「兄上〜〜〜〜〜っ!!!!」
 豪快に扉が開け放たれ、リムスレーアが飛び込んでくる。
 そして、その勢いのまま驚きに固まっている王子に飛びついた。
 「リ・・・リム?」
 「もー姫様ってば、またノックもなさらないでぇ」
 遅れて、ミアキスも部屋に入って来た。
 いろいろ心の整理もついたようだし、もう妹が甘えてくることはないのかなぁ・・・と少し感傷に浸っていた王子は、いつもとまったく変わらないリムスレーアの態度に、逆に戸惑っている。
 「兄上、ありがとうなのじゃ兄上っ!昨夜わらわの夢に母上と父上が出て下さった。そして、『よくがんばった』とわらわを褒めてくださったのじゃ!」
 興奮気味に頬を紅潮させ、リムスレーアは瞳をキラキラさせている。
 「それは良かった・・・・けどリム、その恰好は?」
 改めて妹の姿を見下ろし、王子は尋ねる。
 大きすぎる着物は裾を引き摺り、胸元には昨夜の王子を真似たように詰め物をしている。
 「わらわだけが母上の夢を見たのでは兄上に申し訳がないのじゃ。兄上も、母上に会いたかろう?」
 「そのお着物・・・陛下のですか?」
 裾に施された豪華な刺繍に、リオンは目を止める。
 「そうじゃ。兄上・・・・わらわも、母上に似ておるかのぉ?」
 照れつつ、いびつに膨らんだ胸元に手を置く。
 「ん〜陛下はもうちょっと大きかったですよねぇ?詰め物足してみますぅ?」
 ミアキスはそんなことを言いながら、これでもかとリムスレーアの着物に綿を詰める。
 「ミアキス・・・・・」
 「ところで王子ぃ?」
 呆れ顔の王子に、ミアキスはにっこり笑いながら手にした着物を差し出す。
 「昨夜の王子、とぉってもお綺麗でしたよぉ?今日は姫様が陛下の恰好をなさっていますので、王子は姫様の恰好をしませんかぁ?」
 王子は一つ息を吐き、リオンと声を揃えて言った。


 「「却下」です」
 
 
 
2006.7.7

七夕短冊リクエスト。
 特に、事前に「七夕だからリクエスト受け付けます〜」とかは言ってない。
七夕だし、拍手や目安箱の中から何か描くか〜くらいのキモチで。
そしたらば、5日23時に目安箱に「七夕SS」のリクエスト入りまして。
それ見た時には、「7日まで1日しかないのに、そんな簡単に書けるか〜っ!」とか思ったんですが。
その瞬間に何かが頭の中に降りてきまして。

なんだかんだで、書いてしまったね。
だって、私、『真のシスコンの紋章』宿してますものっ!!

さてさて。問題は今回のSSが女装ネタになってしまったことだ。
注意書きはするが、嫌なヒトはイヤかもしれん。
かといって、表で受けたリクエストを裏で公開するのは反則じゃろうしなぁ。

7/8まで公開にするか。
・・・とか思っていたんだが。
予想以上に好評いただいたので、ちょっと様子見る。



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